タイシンブログ
【大阪校】新井先生より「いかに語彙力をつけることが大事なのか、という実例を見てみましょう」
カテゴリ:タイシン大阪校
公開日: 2022年12月26日 09:54
大阪校の新井です、こんにちは。
「国語の成績を上げたいんですけれども、何から取り掛かればいいですか」とあなたに尋ねられたとしましょう。
私はこう答えます ――「そうやね、まず漢字の勉強からしよか」。
こう答えると「ほんまにそれで大丈夫なん?」という顔をされます。
「漢字の勉強」というと、小学校のころにやらされた「漢字ドリル」のように、字画を覚えることを思い出すかもしれません。
大学入試で取り組む「漢字の勉強」にもそういう要素はないわけではないけれども、大学入試用の漢字の練習帳は「字」ではなく「(二字)熟語」が〝覚える単位〟となっています。
つまり、大学入試に向けて漢字の勉強をする場合、熟語を構成する正確な字とその「意味」を覚えることが大事なのです。
言い換えると、漢字の勉強を入り口にして「語彙力」をつけるということが大事なのです。
それでは、いかに語彙力をつけることが大事なのか、という実例を見てみましょう。
入試問題(2021日本体育大)の本文の一部を以下に抜き出してみました。
そんな不完全 な人間が構成する社会は、必然的に不完全な存在であり続け、永遠に理想形態にたどり着くことはありません。(中略)保守は、そんな人間社会の完成不可能性を静かに受け止めた上で、理性によってパーフェクトな社会が出来上がるという楽観的な進歩主義を根本から疑います。
B 、保守は人間の理性に全面的に依拠するよりも、長年の歴史のなかで蓄積されてきた社会的経験知や良識、伝統といった「人智を超えたもの」を重視します。歴史の風雪に耐え、多くの人の経験が凝縮された社会秩序に含まれる潜在的英知を大切にしようとするわけです。どんなに頭のいい人間の思考にも決定的な限界が存在し、深く物事を考えた思想家の構想も、多くの人間が積み重ねてきた社会的経験知にはかなわないことを、保守は冷静に受け止めます。
黄色のマーカーを引っ張った語・語句は、一般的な漢字とか語句のテキスト(練習帳)で扱われている二字熟語や慣用句です。
つまり、「入試でよく出るから書けるようにしましょう、意味を覚えましょう」という漢字・語句です。
タイシンの国語の授業で用いているものでも取り上げられているものばかりです。
それでは、これらの語・語句の意味をよくわかっていない人がこの文章を見ると、どのように見えるのでしょうか。
そんな不完全な人間が する社会は、 的に不完全な存在であり続け、永遠に理想形態にたどり着くことはありません。(中略)保守は、そんな人間社会の完成不可能性を静かに受け止めた上で、 によってパーフェクトな社会が出来上がるという 的な を から疑います。
B 、保守は人間の に全面的に するよりも、長年の歴史のなかで されてきた社会的経験知や 、伝統といった「 を超えたもの」を重視します。 、多くの人の経験が された社会 に含まれる 的 を大切にしようとするわけです。どんなに頭のいい人間の思考にも決定的な限界が存在し、深く物事を考えた 家の も、多くの人間が積み重ねてきた社会的経験知にはかなわないことを、保守は冷静に受け止めます。
私はよく「言葉の意味が解らないまま読むということは、空欄の問題をわざわざ自分で増やしているようなもんやで」と言います。
さて、元々の文章には一か所接続詞の空欄問題があります(空欄B)。
《さらに/しかし/だから/とくに/また》の中から解を出すという問題ですが、正解は《だから》です。
保守は、そんな人間社会の完成不可能性を静かに受け止めた上で、 理性によって パーフェクトな社会が出来上がるという楽観的な進歩主義を根本から疑います。
だから 、保守は人間の理性に全面的に依拠するよりも、長年の歴史のなかで蓄積されてきた社会的経験知や良識、伝統といった「人智を超えたもの」を重視します。
{「理性による進歩主義を疑う」⇒「理性に依拠するよりも長年の歴史のなかで蓄積されたものを重視する」}というように文中の記述を図式化すると、「理性を疑うから理性ではないものを重視する」という〈因果関係の文型〉となっていることがわかります。したがって《だから》が適するわけです。
ただ、この解にたどり着くまでに「理性」という語と「人智」とがほぼ同じ意味であること、「進歩」と「伝統」とが対義(反対の意味)であることということに気づいていると、よりしっかりとした根拠をもって、因果関係の接続詞《だから》を選ぶことができるはずです。
「国語=日本語だから、特に勉強しなくともちゃんと読めるはずだ」と、私も高校生の頃思ったものです。
けれども、受験の結果は全部ダメ。
浪人するにあたって、「ひょっとすると、得意やと思っていた国語がほんまはアカンかったんちゃうか」と思って点検した結果、実は漢字熟語や慣用句を〝うろ覚えの当てずっぽう〟で読んでいたことがわかり、「アカンかったはずやわ」と深く納得したことを思い出します。
私たち日本人にとって、漢字熟語は本来外国語(中国語)です。
英語の勉強で辞書をひいて意味の解らない語の意味を調べることと同じように、国語の勉強でも意味の解らない語の意味を調べるために辞書を引けばよいのです。
特に国語の場合、辞書をひいて「うわっ、思ってたんとちゃうわ」と自分のあやふやな語彙力にショックを受けたほうが最終的に成績は上がると思います。
だから、上の文章でマーカーを引いた語句の説明をここではしません。
ぜひ自分で辞書をひいて確かめてみてください。
ただ、こういう学習を自分で計画的に進めていくのは結構骨が折れるものです。
そこで、タイシンでは漢字と語句とでテキストをそれぞれみなさんに渡して、範囲を区切って予習をし、授業のなかでそれぞれ小テストを行っています。
よほどのことがない限り、必ず行ないます。
一人きりで取り組むのではなく、授業に出る人全員で取り組みます。
大事なことだから、みんなで取り組みます。
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